ラチェルトーザはマテーラで最も信頼の高いオリーブオイルの搾油所であり、自分たちの名前でオリーブオイルも作っています。
搾油所はマテーラ県のフェッランディーナにあって、自社のオリーブ畑を持ち、自社のオリーブオイルを生産しています。自社のオリーブ畑はすべて有機栽培です。
EUオーガニック認証のオリーブオイルを作るためには、搾油所もオーガニック認証を受ける必要があり、もちろんラチェルトーザもEUオーガニック認証の搾油所です。
搾油方法は遠心分離で、25℃以上の熱は加えません。1975年までは伝統的圧搾法を採用していました。
搾油した後、ろ過せずデカンテーションで濁りを取り、しぼりたての辛味(刺激のあるスパイシーさ)を落ち着かせるのに1、2ヶ月かかります。それから出荷されます。
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ラチェルトーザの歴史
ラチェルトーザ搾油所は1960年代の初めにフェッランディーナのによって設立されました。フェッランディーナはオリーブ栽培が特に盛んなマテーラ県の丘の上の小さな町です。
ジョヴァンニ・ラチェルトーザさんは長年オリーブ栽培に情熱を持って、粘り強く取り組んだ方で、フェッランディーナの典型的なオリーブの一つの種類であるマイアーティカ種のパイオニアとして、40年以上に渡って生産活動を前進させました。妻のマリアアンナさんがそれを支えました。
現在は、ジョヴァンニさんとマリアアンナ夫妻の子どもの4人姉妹が両親の遺産を受け継ぎ、約80haの農地や搾油所の管理運営をしています。とても高品質なオリーブオイルを作る、非常に真面目な会社です。
ラチェルトーザのオリーブ園
ラチェルトーザのオリーブ畑はマテーラ県のフェッランディーナ、マテーラなど、それぞれ数10km離れた場所3カ所に分かれてあります。土壌や標高も違います。気象などの影響で、オリーブが損害を受ける可能性を分散させるためです。
● フェッランディーナのオリーブ園
ここのオリーブ畑は1700本の木すべてがマイアーティカです。
● マテーラのオリーブ園
マテーラの市街地の北のはずれにあります。ここではマイアーティカは育ちません。
オリアローラやコラティーナという南イタリアで多く栽培されるオリーブを中心に、様々な種類のオリーブがあります。
オリアローラには種類がいくつかあります。マテーラで多いのはオリアローラ・デル・ブラダーノです。
これはオリアローラ・タランチュラという種類です。
クモの形に似ているのでしょうか。
並木のように植えられているのは、フランジヴェント(チプレッシーノ)という種類です。
密に植えることができ、木はまっすぐ伸びて背が高くなるので、防風林として使われます。
メタポントという、海に近いところでよく見られるオリーブです。
有機栽培
ラチェルトーザの畑では、オリーブはすべて有機栽培されています。
この黄色い板には強力糊とホルモン剤の入った小さな容器が付いています。
殺虫剤の代わりにこのホルモン剤で虫を惹き付けて捕まえます。
これは主に蝶々がターゲットです。
幹に巻き付けられた虫取り用の罠です。下から木を登って来て、葉のふちを食う虫の駆除用です。
多くの木に使われており、上のフランジトゥーラ・ヴェントの並木にも全部巻かれています。
虫はこの白い繊維に足を取られて動けなくなり、乾きで死にます。「かわいそうでしょ?」とは説明してくれたルイージさん談。
● オリーブミバエ
オリーブにとって一番の敵はオリーブミバエです。
気温15-30℃で生息します。湿度と温度の高いところにいますが、生息環境の条件としては温度がより重要です。
マテーラのオリーブ畑は標高約200mに位置します。7月、8月は最高気温がいつも40℃くらいあるので、オリーブミバエの心配はありません。
逆に標高の高いところにある別の畑(約600m)は、気温が低いので、夏場は常に気をつけていないといけません。
海の近くの方が夏は気温が低いので、オリーブミバエが多いです。したがって、海の近くで有機栽培をしているオリーブ農家の夏場の仕事は大変です。
<駆除の方法>
まずは、ホルモン剤と強力糊の罠(上の写真)を木に結び付け、それでオリーブミバエを捕まえます。
2日に1度見回り、罠にかかるオリーブミバエの数が徐々に増えて行くようなら、他の方法を採用します。
他の方法とは、蚊取り線香の殺虫効果のある成分と油と水を混ぜて、噴霧器で撒布することです。虫は皮膚で呼吸をするので、体が油で覆われることで呼吸ができなくなり、死んでしまいます(殺虫成分の方が、駆除の効果は低いです)。
1度化学農薬を使うと30日間何もしなくてもいいけれど、こういう有機の殺虫剤だと、40時間しか殺虫効果は続かないそうです。
この日案内してくれたラチェルトーザのルイージさんによると、この15年で気候にとても大きな変化があり(このお話を伺ったのは2009年)、オリーブミバエが生息する時期も場所も変わったそうです。
昔は標高の高い場所にある畑(約600m)では、9月になると最低気温が5℃以下になったので、オリーブミバエの心配はしなくて良かったそうですが、今は9月も駆除は続けないといけません。マテーラの畑でも、11月中旬の収穫の時期も、最低気温が8℃~12℃と高いので、まだオリーブミバエに注意が必要です。
これがオリーブミバエです。背中に白い横線が目印です。↓
収 穫
オリーブの幹や枝をつかんで振動させる機械を使って収穫します。1分もかかりません。
振動で落ちなかったオリーブは、電動の熊手で収穫します。背中にモーターを背負っています。2人で行い、あまり時間はかかりません。
収穫されたオリーブはカゴに集められて搾油所に運ばれます。
オイルを搾る時の、この農家の考える理想的な熟し具合です。緑は熟す前の色で、熟すに従い紫から黒に色が変化します。黒が完熟です。未熟な実の方が、酸度も低く、ポリフェノールの含有量も多いです。
土の上に落ちた実は、もったいないようですが、オイルの品質を下げるので使われません。
搾 油 所
この搾油所では、1976年から遠心分離機による連続法でオリーブオイルを作っています。
● オリーブオイルができるまで − 搾油所の仕事
まずここで持ち込まれたオリーブの重量を量ります
これはオリーブの大きさを選別するための機械です。この上をオリーブが転がっていきます。
大きいものがテーブルオリーブの干しオリーブになります。
計量の終ったオリーブは搾油の順番を待ちます。
オリーブの上に白い紙が見えますが、ここに顧客の名前や重量が記されています。
オリーブが位置に着きます。搾油の始まりです!
オリーブが少しずつの固まりになってベルトコンベアを登って行きます
葉っぱ等が取り除かれた後、洗浄されます
続いて、ハンマーミルと呼ばれるハンマー型の破砕機でオリーブを破砕します
破砕機で破砕されたオリーブをこねてペースト状にします。
伝統的圧搾法で採用されているような、オリーブの実を石臼で潰すやり方と違い、上記の破砕機を使った方法だと実が潰しきれないので、こねることで油を取り出しやすくします。
オリーブのペーストは次にこの1番目の遠心分離機で、液体と固体に分離されます
液体は、ほとんど油分の液体と、ほとんど水分の液体と、2つに分かれて遠心分離機から出て来ます。
この後、それぞれ別の2番目の遠心分離機で油と水分とに分離されます
2番目の遠心分離機から油が出て来ているところです。
搾りたてなので、にごっています
これは、ほとんど水分の液体から油を取り出す遠心分離機です。
こちらからも油が出て来ています
出来上がったオリーブオイルは、ろ過せず、静置して微細な固形物(オリーブの実)を沈殿させます。
澄んだ上澄み液(オイル)を別の容器に移し替え、また沈殿させるという工程を少なくとも3回行います。
オリーブオイルの貯蔵庫は、気温18℃に保たれています
オリーブの収穫時期に搾油所を訪ねると、どこも人がいっぱいで、皆自分のオリーブが搾られてオイルになるのを待っています。
比べて、ラチェルトーザの搾油所は静かで、人の姿はあまりありません。
不思議に思って、この日搾油所まで送ってくれた人に聞いてみると、ラチェルトーザはとても真面目な搾油所なので、安心して任すことができるからなのだそうです。
ということは、ほかの搾油所で見かけるたくさんの人々は、自分のオリーブを見張ってるということなのだな……
<…>ほかのところでは、生産者たちは自分のオリーブが加工される全行程に目を光らせ、オイルを手にするまでその場を離れようとしなかった。<…>
出典:「エキストラバージンの嘘と真実ースキャンダルにまみれたオリーブオイルの世界」日経BP社
ラチェルトーザのオリーブオイル
ラチェルトーザではブレンドの違いで4種類のオリーブオイルを販売しています。
ドン・ジョヴァンニ
香りが良く、苦味や辛みや青臭さ等が感じられるオイルです。
風味の強い食材と合います。豆のスープやミネストローネなど野菜のシチューやポタージュなどにとても良く合います。
えぐ味などが強い野菜にも合います。
〈オリーブの種類〉 オリアローラ・デル・ブラダーノ40%、フェッランディーナのマイアーティカ30%、コラティーナ20%、レッチーノ10%
・緑がかった濃い黄金色
・熟していないオリーブとトマトの葉の香り
・中ぐらいのフルーティーさ、バランスのとれた苦みと辛みがあり、新鮮な香りが持続する。豆料理、ブルスケッタ、ミネストローネ、魚のスープ、牛肉のグリルに最も適する
ヴィリデ
香りが良く、苦味や辛みがバランスの良いオイルです。肉や、野菜のスープ、カルパッチョなどにとても良く合います。EUオーガニック認証のEXVオリーブオイルです。
〈オリーブの種類〉 オリアローラ・デル・ブラダーノ50%、フェッランディーナのマイアーティカ30%、レッチーノ20%
・緑がかった黄金色
・熟していないオリーブとトマトの葉の香り
・複雑で、草のような上品な香りがあります。バランスのとれた苦みと辛みの特徴があります。グリルした牛肉、野菜スープ、熟成していない新鮮なチーズ、海の幸を使った前菜に最も適する
ラーミア
マイアーティカという稀少種のオリーブ100%のオリーブオイルです。繊細ながら風味がしっかりしていて、淡白な素材に合わせると、よりオイルの味も引き立ちます。淡白な肉、魚、野菜などに合います。生ハムとも良く合います。
・緑がかった濃い黄金色
・繊細で複雑、草の香り
・味と香りが調和していて上品。ほのかな辛みと持続する新鮮な香りの生き生きとした後口。白肉(鶏肉と仔牛肉)のマリネ、野菜スープ、熟成とフレッシュの間のチーズ、煮魚、野菜のグリルに最も適する
ラチェルトーザ
あまり主張をしないソフトなオイルですので、他の食材との馴染みが良く、食材のおいしさを引き立てます。ソースなども手軽においしくできます(例えば、お味噌と混ぜるだけで、香りのいいソースができます)。
〈オリーブの種類〉 フェッランディーナのマイアーティカ、その他
・濃い黄金色
・熟したオリーブ、畑の草の繊細なトーン、後口に甘いアーモンドの香り
・繊細なフルーティさ、ソフトで後口が良い、繊細な香りが持続する。ソース作り、野菜のグリル、魚または肉のカルパッチョ、きのこのヴェッルターテ、魚や鶏または仔牛やウサギの煮込みまたは網焼きに理想的
● マイアーティカ・ディ・フェッランディーナ
マイアーティカ・ディ・フェッランディーナはイタリアのオリーブの1つの種類で、生育に適した場所が限られ、バジリカータ州マテーラ県内フェッランディーナを中心にわずかな場所でしか育ちません。この実からはオリーブオイルとテーブルオリーブの両方が作られます。オイルは緑がかった黄金色で、繊細な風味を持ちます。
マイアーティカから作られるテーブルオリーブの「干しオリーブ」は、バジリカータ州の有名な特産品のひとつです。ラチェルトーザではこの干しオリーブの生産も行っています(マテーラのオリーブオイルのページもご覧下さい)。
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